理解しにくい病気｢正常圧水頭症｣

理解しにくい病気｢正常圧水頭症｣

正常圧水頭症とは

– 理解しにくい病気｢正常圧水頭症｣

-# 正常圧水頭症とは

正常圧水頭症とは、脳室と呼ばれる脳の中の空間に水が溜まることで、脳が圧迫されてさまざまな症状を引き起こす病気です。水頭症には、乳幼児に多い「乳児水頭症」や、交通事故などの外傷後に起こる「外傷性水頭症」などがありますが、正常圧水頭症は、それらとは異なり、脳の圧力が正常か低くても起こるため、「正常圧水頭症」と呼ばれています。原因は不明なことが多いですが、脳の老化、脳梗塞、脳出血、髄膜炎、外傷などが原因となる場合があります。

正常圧水頭症の症状

-正常圧水頭症の症状-

正常圧水頭症に特徴的な症状は歩行障害、認知症、尿失禁の三つです。これらは俗に「三徴候」と呼ばれます。ただし、このうちの一つまたは二つの症状だけが現れることもあります。

-歩行障害-は、小刻みでよちよち歩き、つまずきやすくなります。認知症は、記憶障害、注意力の低下、判断力の低下などがみられます。特に、実行機能障害といって、物事を計画して遂行することが苦手になります。

-尿失禁-は、急に尿意を感じて我慢できず、尿を漏らしてしまうようになります。これは、脳が膀胱の働きをコントロールできなくなるためです。

三徴候以外の症状としては、頭痛、めまい、ふらつき、抑うつ、不眠、食欲不振などがあります。

正常圧水頭症の原因

正常圧水頭症の原因は、まだ十分には解明されていませんが、様々な説があります。

近年有力視されている説の一つは、脳の老化によって脳脊髄液の産生と吸収のバランスが崩れることで起こるというものです。脳脊髄液は、脳室や脳脊髄の中を循環する液体で、脳や脊髄を保護し、栄養分を運搬しています。脳老化が進むと、脳脊髄液の産生量は減少する一方、吸収される量は増えるため、脳室内に脳脊髄液が貯留してしまいます。

もう一つの説は、頭部の外傷や脳出血、脳腫瘍などによって脳の血管が圧迫され、脳脊髄液の流れが妨げられることで起こるというものです。脳脊髄液の流れが妨げられると、脳室内に脳脊髄液が貯留してしまいます。

以上のように、正常圧水頭症の原因は様々であると考えられていますが、まだ十分には解明されていません。

正常圧水頭症の診断

正常圧水頭症の診断は、比較的新しい病気に分類されるため、知名度が低く、他の病気との誤診が多いため、診断が遅れてしまうことがあります。症状として、認知症やうつ病、転倒しやすくなる、尿失禁などがあるため、認知症や老年性うつ病と誤解されやすく、診断まで数ヶ月、ひどいときには数年かかってしまうこともあります。

まずは問診で症状を詳しく聞き、水頭症の可能性があると判断された場合、脳脊髄液の圧力を測定します。脳脊髄液の圧力は、一般的に10～15cmH2Oですが、正常圧水頭症の患者は5～10cmH2Oです。

その後、CTスキャンやMRIなどの画像検査を行い、脳室の拡大や歩行障害の有無など、正常圧水頭症の特徴的な所見を確認します。

正常圧水頭症の治療

正常圧水頭症は、脳室が拡大し、脳脊髄液が過剰に蓄積する病気です。原因は不明で、高齢者に多く見られます。正常圧水頭症の主な症状は、歩行障害、認知症、尿失禁などです。症状が軽いため、見過ごされることが多く、診断が遅れることが少なくありません。

正常圧水頭症の治療法は、脳脊髄液を排出するシャント手術が一般的です。シャント手術は、脳室にチューブを挿入し、余分な脳脊髄液を腹腔などに流す手術です。シャント手術は、症状を改善する効果が高いですが、合併症のリスクもあります。

正常圧水頭症の治療には、薬物療法やリハビリテーションも併用されます。薬物療法は、脳脊髄液の産生を抑制したり、流れを改善したりする薬を使用します。リハビリテーションは、歩行障害や認知症の改善を目的として行われます。

正常圧水頭症は、早期診断と適切な治療により、症状を改善することが可能です。もし、歩行障害、認知症、尿失禁などの症状がある場合は、脳神経外科を受診してください。